私文書の偽造・変造

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文書の偽造・変造

文書の偽造・変造

公文書

刑法上の文書偽造とは、権利義務や事実証明に関する文書・図画の本物を真似て偽物をつくることをいいます。
刑法上の文書変造とは、権利義務や事実証明に関する文書・図画に改ざんや改変を加えて不正な物をつくることをいいます。


公文書・私文書

私文書

公文書とは国や地方公共団体の機関または公務員が職務上作成した文書のことをいいます。
私文書とは、公文書以外の、私人の名義で作成される文書のことをいいます。
公務員が作成した文書であっても公務の遂行と関わりのないものであれば私文書となります。


刑法155条(公文書偽造等)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

刑法156条(虚偽公文書作成等)
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

刑法157条(公正証書原本不実記載等)
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。

刑法158条(偽造公文書行使等)
第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。



刑法159条(私文書偽造等)
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

刑法161条(偽造私文書等行使)
前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。




有形偽造

有形偽造とは、作成名義を偽ることをいい、作成できる権限がないのに、他人の名義を冒用して文書を作成することです。
有形偽造は真正に作成されていない文書であり「文書偽造」と呼ばれます。
作成者と名義人とが一致していない「不真正文書」であるため、刑罰対象となります。


無形偽造

無形偽造とは、作成名義に偽りはない文書であるものの、内容自体に虚偽がある文書を作成することをいいます。
無形偽造は虚偽の内容が書かれた文書であり「虚偽文書」と呼ばれます。
作成者と名義人とが一致しているため「真正文書」となるので、刑罰対象になりません。
ただし、公務員が作成する公文書や医師が作成する診断書の偽造については罪に問われます。


有印文書と無印文書

作成名義人の印章や署名のあるものを有印私文書といい、印章・署名のないものを無印私文書といいます。
印章や署名がない無印文書よりも、有印文書の方が、文書に対する信用はより強くなるため、印章又は署名を使用して偽造・変造した場合、より重く処罰されます。


有印私文書偽造罪

文書偽造は、作成権限のない者が、他人の印章または署名を使用するか、偽造した印章または署名を使用して、私文書を偽造する罪です。


有印私文書変造罪

文書変造は、他人が押印または署名した私文書について、権限のない者が変更を加える罪です。


作成名義人でない者よってなされる偽造や変造を有形偽造・有形変造といいます。
作成名義人によってなされる偽造や変造を無形偽造・無形変造といいます。




処罰の対象と範囲

文書偽造は、通常、何らかの「目的」に対する「手段」であるため、牽連罪として一つの犯罪になることがあります。

自ら偽造または変造し、もしくは偽造または変造された文書であることを知っていた上で、これを用いて詐欺や横領を行った場合、牽連犯(刑法54条1項後段)となり、詐欺罪や横領罪で処罰されます。

一定の親族間(配偶者・直系血族又は同居の親族)による詐欺罪や横領罪などの犯罪は刑法第244条第1項により「親族間相盗例」として刑が免除されますが、有印私文書偽造(変造)や偽造(変造)私文書行使罪は処罰の対象となります。






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