不起訴処分に対する検察審査会への不服申立

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起訴・不起訴

起訴とは、検察官が特定の刑事事件について裁判所の審判(刑事裁判)を求めることをいいます。
起訴の権限は、「起訴独占主義」により、原則として、検察官(検事)のみが有しています。
起訴されると裁判手続に移り、被疑者は被告人という立場になります。

検察官が裁判所の審判を求めない判断を決定した場合を不起訴といいます。


起訴・不起訴の種類

不起訴処分には、以下のとおり、いくつかの種類があります

処分内容 説明 具体的な例
起訴処分 ※起訴されると99.9%が有罪になる。




罪とならず 犯罪の構成要件に該当しない 正当防衛、緊急避難、刑事未成年、心神喪失、等
親告罪の告訴取下 器物損壊、過失傷害、名誉毀損、信書開封、ストーカー、リベンジポルノ、親族間の犯罪、等
嫌疑なし 犯罪を認定する証拠がない 誤認逮捕、偽証や真犯人の判明、等
嫌疑不十分 立証するだけの証拠が不十分
起訴猶予 犯罪事実があるが起訴を見送る ※被害者との示談成立済
※情状酌量・犯罪の内容や程度、更生可能性
処分保留による釈放 処分を決めまいまま身柄を釈放(後日、在宅起訴される可能性有) ※勾留期間の経過
※逃亡や罪証隠滅の危険性がない



不起訴処分に対する検察審査会への不服申立

告訴状・告発状が受理されると、捜査がなされ、刑事記録が検察庁に送致されます(書類送検)。
しかし、起訴権限(公訴権)は検察官にあるため、書類送検しても、検察庁の判断で不起訴処分になることがあります。

検察官が被疑者に対する起訴または不起訴の処分を決定した場合、その処分内容が告訴人や告発人に通知されます(刑事訴訟法260条)。

また、告訴人や告発人等から不起訴処分に関する理由の説明を求められた場合、検察官は不起訴理由を告知しなければなりません(刑事訴訟法261条)。 この場合の「理由」は、通常、あくまでも「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの処分内容のみの告知となります。

起訴されて無罪と判断された場合には「一事不再理の原則」によって再度の起訴をすることは出来ませんが、不起訴の場合は、裁判所による審理を受けていないため、起訴をすることが可能です。

不起訴とする処分がなされた場合、告訴人や告発人および被害者や被害者の遺族(検察審査会法2条2項,30条)は、その不起訴処分に対して不服があるときは、検察審査会に対し、その処分の当否の審査を申立することが出来ます。
ただし、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定に違反する罪に係る事件、内乱罪、等については、審査申立をすることが出来ません。

犯罪白書によると、「起訴相当」「不起訴不当」の議決がなされた事案のうち、ここ数年の起訴率平均は17%程度となっています。
もちろん、刑事事件に最も精通している検察官が事件記録を精査した上で不起訴が相当であると判断した以上、よほど新たな証拠や事実でも発見されない限り、仮に不起訴不当や起訴相当などの議決があったからといって、検察官の判断を覆すことが難しいのですが、不服申立をした意向をくみ取って起訴しているケースが相当数あると見られています。


検察審査会とは

検察審査会とは、検察官が独占する起訴権限(公訴権)の行使に民意を反映させ、また不当な不起訴処分を抑制することを目的に、地方裁判所とその支部の所在地に設置される機関であり、全国149ヶ所に165の審査会が設置されています。

検察審査会は、無作為に選出された有権者11人の審査員によって構成されています(検察審査会法4条)。

市区町村選挙管理委員会が管轄区域の選挙権を有する者の中から候補者をくじで選び、検察審査員候補者名簿に記載し、名簿に記載された方々へ「検察審査員候補者名簿への記載のお知らせ」という通知書面を送付します。
この候補者名簿の中から、再度くじで、11名の検察審査員及び補充員が選ばれることになっております。


検察審査員の仕事

検察官がなした不起訴処分が妥当であったのかどうかを審査し、最終的な議決の種類と要件(賛成の数)をまとめることを主な仕事としています。


申立権者

審査申立をすることが出来るのは、告訴人、告発人、被害者、被害者が死亡した場合は被害者の配偶者・直系の親族又は兄弟姉妹(検察審査会法2条2項,同30条)となっております。

ただし、検察審査会は、申立がなくても、職権で審査を実施することも認められています(検察審査会法2条3項)。


申立期限

審査申立に期限や時効はありませんが、公訴時効を過ぎてしまうと、公訴の利益がなくなってしまうため、免訴の決定がなされてしまいますので、不服申立の審査や再捜査・再検討に要する期間も考慮して、余裕をもって申立をすることが重要です。


申立方法

審査申立書を作成し、不起訴処分を不当とする理由や事実を明記して検察審査会に提出します(検察審査会法30条,31条)。


審査方法

検察審査会は、毎年3月、6月、9月及び12月に、検察審査会議を開き、議決を行います(検察審査会法21条)。
なお、検察審査員全員の出席がなければ、会議を開き議決することができません(検察審査会法25条)。

審査の順序は、審査申立の順序によりますが、検察審査会長は、特に緊急を要するものと認めるときは、その順序を変更することができます。
また、職権による審査の順序は、検察審査会長が、これを定めます(検察審査会法33条)。

検察審査会は、必要に応じて、検察化に対し、必要な資料の提出、会議に出席して意見を述べることなどを要求することが出来ます(検察審査会法35条)。
また、検察審査会は、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めたり、審査申立人及び証人を呼び出しして尋問したり、法律その他の事項に関し相当と認める者の出頭を求めて専門的助言を徴することができます(検察審査会法37条、38条)。

議決内容

検察審査会の行う議決には、3つあります(検察審査会法第39条の5)。

  1. 起訴を相当とする議決(起訴相当)
  2. 不起訴処分を不当とする議決(不起訴不当)
  3. 不起訴処分を相当とする議決(不起訴相当)

議決は11人中6人以上(過半数)で決するとされています(検察審査会法第27条)。
ただし、「起訴相当」とする議決には、11人中8人以上(3分の2以上)の多数によらなければならないとされています(同第39条の5)。


検察官による再検討

起訴相当または不起訴不当の議決がなされた場合、検察官は再度、起訴すべきかどうかの検討を行い(検察審査会法41条2項)、「不服申立事件処理結果通知書」という書面によって検察審査会に結果を通知します(検察審査会法41条3項)。


検察審査会による再審査

当初の議決が「起訴相当」の場合で、かつ検察官が不起訴を維持する場合に限り、検察審査会は改めて、2度目の審査を行います(検察審査会法41条の2)

検察審査会の再審査で、11人中8人以上(3分の2以上)の賛成によって「起訴相当」の議決がなされた場合(検察審査会法41条の6第1項)には、検察官の関与なく、裁判所が指定した弁護士によって強制起訴することができる状態になります。

指定弁護士は、通常の起訴や公判など、検察官と同様の任務を行います(検察審査会法41条の9)。
また、指定弁護士は、必要に応じて、警察や検察に捜査を嘱託することも可能です(検察審査会法41条の9第3項)。




検察審査会による審査の流れ

検察審査会の審査の流れ


議決に対する起訴率

「起訴猶予」および「嫌疑不十分」に対する「起訴相当」または「不起訴不当」の議決に対する起訴率は以下のとおりです。


「起訴相当」「不起訴不当」の議決に対する起訴率

不服申立における実際の対応状況

犯罪白書によれば、不服申立の受理がなされたうち、毎年、未処理が常に3割程度あり、さらに、議決されない「その他の処理」が常時1割~2割あります。
実は、不服申立てされると、直ちに検察官に副本が送達されるのですが、被害者が不起訴処分に納得していないという状況を検察官が汲み取り、議決がなされるよりも前に、検察官が起訴を行うというケースが相当数あるのです。





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